「台湾の植木の里・田尾郷と日曜花市視察ツアー:2016」報告-その3(台湾の接ぎ木)
“見学の希望は遠慮無くリクエストしてください!”というお言葉に甘えて、“接ぎ木生産を主体としているナーセリーを訪ねたい”とお願いしてみました。
すると、接ぎ木をやっている生産者は誇りを持って取り組んでいて、企業秘密的なことも多いので見学は難しいかもしれない、との回答でした。
ところが、接ぎ木生産者と親しい方を通じて交渉してくださったようで、翌日見学できることになりました!
ご紹介いただいた接ぎ師は、果物の接ぎ木の専門農家で、トップクラスの腕前とのことです。(マンゴーの接ぎ木を多く手掛けているそうです。)
台湾では、接ぎ木委託を受けた場合、歩合制で費用が支払われるので、スピードがとても重要で、この方は一人で一日に1,000本も接ぐそうです。
1本当たりの接ぎ手間が4元(日本円で1元が約15円)なので、1,000本接いで日当15,000円になるそうです。
台湾ではなかなかの稼ぎとのことです。
日本の果樹の接ぎ木の場合、ナイフを使う「接ぎ手」とテープを巻く「巻き手」の二人が一組になって作業することが多く、その二人一組で一日に1,000本程度接ぐのが普通なので、約2倍のスピードになります。
見せていただいた接ぎ木の方法は「切り接ぎ」でしたが、穂木と台木の削り方は全く同じでした。
ただ、テープの巻き方が異なっていて、最初に太さ1.2㎜程度の中空のビニールの紐(写真参照)のようなものを巻いて穂木を固定し、それから接ぎ木テープで穂木全体を包(くる)んでいました。
・接ぎ木テープを巻く前に巻いている中空のビニールの紐
“ビニールの紐を巻く作業が増えてスピードが落ちるのではないか?”と尋ねてみると、接ぎ木テープを巻く時に穂木がずれる心配がないので、こちらの方が早く巻ける、とのことです。
接ぎ木ナイフは、日本の切り出しの形とは全く異なったものでした。(刃は片刃で同じです。)
丸い太めの柄が付いていて、それによってナイフを持ったままテープを巻くことができるそうで、素早く作業をこなすにはこの形がベストなのだそうです。(切り出しの場合、テープを巻く際にナイフを置くので、これは一理あると思いました!)
・ナイフを手に持ったままテープを巻いています。
台湾は一年中温暖な気候なので、植物が休眠している間に行う接ぎ木はあまり行われていないのではないかと思っていたのですが、果樹だけでなく園芸品種の接ぎ木も盛んに行われていました。
売店には「切り接ぎ」「腹接ぎ」「呼び接ぎ」など、様々な接ぎ方で生産された品種がたくさん並んでいました。
日本では接ぎ木職人が激減していますが、台湾ではたくさんの接ぎ木職人がまだまだ頑張っていて、活気ある園芸業界の一翼を担っているようです。
・8月に接いだマンゴー。2ヶ月ですでに芽が5㎝以上伸びています。
・マンゴーの接ぎ木用台木の実生苗(大量!)
※関連ブログ:
「台湾の植木の里・田尾郷と日曜花市視察ツアー:2016」報告-その1(概要)
「台湾の植木の里・田尾郷と日曜花市視察ツアー:2016」報告-その2(田尾郷のバックヤード:生産現場)