我が社の看板猫(福猫)

ゴン昨年(2017年)のゴールデンウィーク中に一匹の野良猫が圃場にやってきました。
白い毛は茶色く汚れていて、耳の後ろは皮膚病に罹っているのか半分ほど毛が抜け落ちていて、目ヤニもたくさんついている薄汚れた猫でした。
骨と皮だけになって痩せ細ってもいます。
聞こえるか聞こえないかのような微かな声で“ミャー”と鳴きます。
口だけ動いて、声が出ていない時もあります。
歳を取ったオス猫です。
パートさん達は弱々しい姿を見て、“これじゃネズミも捕まえないね”などと言っていました。
ハウスの中でオシッコやウンチをされると嫌なので、ハウス内に入ってきた時は追い出していました。
それ以外は無視していたのですが、なかなか居なくならず、圃場の周りを何日もウロウロしていました。
追い払わないでいると、足下にやってきてスリスリと体を寄せ付けてきます。
野良猫が自分から人に近づいてくることは滅多にないので、飼われていたのに捨てられたのか、野良猫ながらも人からずっと餌をもらっていたのか、人とのふれあいがあったように思います。
あまりに痩せていて元気がないので、可哀想になって餌を与えました。
すると餌を与えてから三日目に、ヘビ(ヤマカガシ)を捕まえて、ハウスの中にズルズルと引きずって入ってきて、頭からムシャムシャと食べ始めたのです。
この様子を聞いたパートさん達(見たのは私だけで、パートさん達は聞いただけ)は、すっかり気味悪がって、“ヘビを食べる猫なんて嫌!”と言って、拒絶してしまいました。
社員会議の結果、圃場には居てもらわないようにしよう、ということになって、パートさんの一人が夕方仕事が終わってから段ボール箱に入れて、ぐるぐるといろいろな道を通って5キロ以上離れた場所に放してきました。
その日の夜は雨だったのですが、何と!翌日の朝にはハウスの入口の前に戻ってきていたのです!
雨の中、ハウスに戻りたいという気持ちで夜中に歩いて戻ってきたのでしょう。
それ以来、不憫に思ってハウスで飼っています。
ゴンハウス内にトイレを用意したのですが、それは利用せず外に出て行って、ハウスの隣りを流れる小貝川の土手でしています。
水に濡れるのを極端に嫌うのに、雨の日でもちゃんと外に出て行ってしています。
ひと月もすると、肉付きもよくなって毛並みも綺麗になりました。
この猫を飼うようになってから、ハウス内からネズミ(ハタネズミ)が姿を消しました。
テーブルの上に食べ物があっても登って漁ったりしません。
忙しく仕事をしている時は、お腹が空いていてもじっと待っています。
穏やかで大人しく、見ているととても癒やされます。
名前は「高野山の案内犬」からもらって「ゴン」と付けました。
ゴンハウスで飼うようになってから、元気になって太ってきていたのですが、7月に急にオシッコが出なくなってしまいました。
オシッコをする姿勢をして1~2時間ずっとそのままの状態なのです。
夜、ネットで調べてみると、オス猫が比較的発症しやすい尿路結石という病気の可能性が高く、放っておくと数日で尿毒症になって命を落とす危険性もあるらしいのです。
翌日は日曜日だったのですが、休日も診察してくれる隣町の病院に連れて行くと、一晩入院してカテーテルによる治療が必要とのことです。(初日の診療費:¥28,000、一泊治療費:¥50,000)
無事助かって良かったと思ったのですが、戻ってから二日目に再発してしまいました!
今度は平日だったので近所の病院に連れていくと、膀胱内の皮膚がただれていて、それが剥がれ落ちて尿路が詰まるらしく、結石よりもたちが悪いということです。
ここでも一晩入院してカテーテル治療を受けて、膀胱内を洗浄してもらったのですが(治療費:¥20,000)、再発の可能性が高く、手術しないと完治しないそうです。
他には圧迫排尿でオシッコを出す介助を続けて、治ることがないこともない、とのことです。
今回も治療二日後にやはり再々発してしまいました。
すぐに手術というのも可哀想な気がしたので、圧迫排尿の仕方を先生に教えていただいて、介助しながらしばらく様子を見ることにしました。(オシッコをする体勢を取ったらそっと近づいて、やさしく膀胱を押してオシッコを出してあげるのです。)
すると一週間後に、オシッコと一緒に1㎜にも満たない小さな粒が出て、それ以来自分でできるようになりました!(完治!)
ゴンその後何事もなく暑い夏を乗り越えたのですが、9月になると今度は風邪をひいてしまいました。
風邪声になって、鼻水を垂らし、くしゃみをして、目ヤニもすごいのです。
再びネットで猫風邪について調べてみると、“自然治癒することはほとんどないので、病院で治療してもらってください”とのことです。
再び病院に連れて行くと、先生が“ずいぶんと手間と金のかかる猫を拾ったな”と言いながら抗生剤の注射をしてくれました。
翌日にはすっかり元気になりました!
そして、ちょうどこの頃から、今までにない勢いで植木が売れはじめたのです!
パートさん達は“きっとゴンちゃんのお陰だ!  ゴンちゃんは福猫に違いない!”と言いながら、より一層かわいがるようになりました。
現在、ゴンは丸々と太ってのんびりとハウスで過ごしています。
助けてもらったことを感謝しているのか、いつも私の後を追いかけてきます。
お茶の時間になると、必ずと言っていいほど膝の上に乗ってきます。
ハウスに来た当初は、来場者に“不細工な猫だね”とか、“悪そうな顔をしているね”などと言われていたのですが、今では“カワイイ~”と言われて写真も撮られるようになりました。
お茶の時間もゴンの話題が多くなり、和やかになりました!
これからも我が社の看板猫(福猫)として、末永く元気に過ごしてもらいたいと思っています。

追記 : その後11月に野良犬に襲われて足を引きずって歩くようになり、日増しに悪くなったので再び病院に連れて行きました。
この時は抗生剤と消炎剤の2本の注射を打っていただき、翌日には普通に歩けるようになりました。
ゴン ゴン・お茶の時間とお昼休みはいつもとうちゃんの膝の上! 気持ちがいいんだニャ~