接ぎ木ナイフ

我が社では、植木の苗木を実生(種から)、挿し木、接ぎ木の三つの方法で生産しています。

挿し木と接ぎ木は、親と全く同じ形質を引き継ぐクローンをつくる無性繁殖です。
無性繁殖する理由は、特殊な形質(例えば、花の色が一般種と異なる、葉に斑が入る、枝垂れる等)を完全に引き継ぐためです。
園芸品種から種を採取して播いても、有性繁殖になるので先祖返りしたりして、全く同じ形質を引き継ぐことが難しいのです。

我が社では、三つの生産方法のうち、特に接ぎ木に力を入れています。
接ぎ木は、ナイフで台木と穂木を平らに削って、両方の形成層(細胞をつくる組織)を合わせて活着させ、台木と穂木で水分・栄養分が行き来するようにします。
そして、接いだ穂木の芽を伸ばし、穂木の形質をそのまま継承するのです。

接ぎ木ナイフその接ぎ木で使用するのが、「接ぎ木ナイフ」です。
一般的な「切り出しナイフ」と形は同じで、厚さがやや薄くなっています。
切れ味は抜群で、ナイフを持ち慣れていない人は恐怖感を抱くほどです。
よく切れるようにしておくと、無駄な力を必要としないので、返って安全なのです。

 

接ぎ木ナイフ一番左のものは、私がお世話になった植木屋の社長さんに譲っていただいたもので、刀鍛冶が作ったものです。
裏面には製作した刀鍛冶の名前が彫られています。 おそらく特注ものです。
左から二番目のものは、刃物専門店で見つけて気に入って購入したものです。
右側の二本は、自作のハンドメイドのナイフです。
その左側が刃の角度が鋭角(刃が薄い)で「芽接ぎ用」、右側が刃が少し立っていて刃こぼれしにくく「切り接ぎ用」として分けて使っています。
この自作ナイフは、金属を切断するための機械式ノコギリ(machine saw)の刃から作ったものです。
材質はスウェーデン製の鋼(はがね)で、硬くて、滑りがよく、最高の切れ味です。
使っていても切れ味が落ちることはなく、木の脂(やに)などの汚れを仕上げ砥石で軽く擦り落とせば元の切れ味に戻ります。
接ぎ木ナイフ写真の上のものができあがったナイフで、下のものがナイフの形に加工して、まだ刃を削りだしていない状態のものです。
作り方は、ノコギリのギザギザの刃をサンダーで削り落とした後、ナイフの形にカットします。
その後サンダーで、ある程度刃の角度に荒削りします。 それから、荒目の砥石→中仕上げ→仕上げ砥石の順で研ぎ上げていきます。

砥石
左から、仕上げ用、中仕上げ用、荒目砥石です。そして一番右のものは砥石の面を平らに矯正するための砥石です。
刃物を砥石で研ぐ時、どうしても刃の当たる部分と当たらない部分ができて、当たる部分が凹んでいって、砥石の面は平らではなくなってしまいます。
平らでない砥石でナイフを研いでいると、上手く研げないばかりか、刃の形が変形してしまいます。
それを防ぐために、常に砥石の面を平らな状態に維持する必要があるのです。

接ぎ木ナイフ毎年、ノコギリの刃から作った自作の接ぎ木ナイフ2本で、たくさんの接ぎ苗を生み出しています。

因みに、今年は安行(埼玉県川口市)の植木屋さんから二丁(2名分)依頼を受けて作りました。
手前味噌ですが、あまりによい出来栄えで、自分で使っているものより良くできたので、お渡しするのが惜しくなってしまったほどでした。

※関連ブログ:
「手作り接ぎ木ナイフ納品!」(こちら)、「手作り接ぎ木ナイフ納品!その2」(こちら

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