マルバノキ‘恵那錦’と‘阿寺錦’

マルバノキ(Disanthus cercidifolius)は、本州の中部地方以西と四国の花崗岩地などの痩せ地に稀に産する高さ1~3mの落葉低木です。(特に木曽地方に多く分布しています。)
葉は丸みを帯びたハート形で、和名はこの葉の形に由来します。
そして学名の種小名:cercidifoliusは「ハナズオウの葉に似た」という意味で、まさにそっくりの形をしています。
秋の紅葉の時期に暗赤色の花を咲かせ、その花は2個が背中合わせにくっついて横向きに咲き、花弁がマンサクのようにシワがあってねじれます。
その花弁の色に因んで別名ベニマンサクとも呼ばれます。
マルバノキ‘恵那錦’の花
このマルバノキの斑入り品種(白覆輪)が‘恵那錦’(Ena-nishiki)です!
マルバノキ‘恵那錦’‘恵那錦’は山口清重氏が岐阜県中津川市の恵那山に生えるマルバノキから採取した種子から出た突然変異種で、1980年頃の実生だそうです。
恵那山のマルバノキの種子から出たので‘恵那錦’と命名したそうです。
繁殖は挿し木も可能ですが、接いだ方が良い苗になるので、専ら接ぎ木繁殖しているとのことです。
マルバノキ‘恵那錦’マルバノキ‘恵那錦’・写真提供:山口清重氏(2枚とも)

‘恵那錦’は白覆輪の品種ですが、恵那山と同じ木曽川水系の阿寺渓谷(長野県木曽郡大桑村)に生えるマルバノキの種子から黄覆輪の品種が出ていて、こちらは阿寺渓谷に因んで‘阿寺錦’と命名されています。
‘阿寺錦’が出たのは1995年の実生で、同じものが‘阿寺の月’という名前でも流通しています。
山口氏のところでは、‘恵那錦’と‘阿寺錦’を含めて、マルバノキの斑入り品種が今では15種類もあるそうです!
マルバノキ‘阿寺錦’・阿寺錦(写真提供:山口清重氏)

※関連ブログ:
「第一回花木よろずサミット」(こちら
「ムシカリ(オオカメノキ)‘ピンクパラソル’」(こちら

参考文献:
「週間 朝日百科 植物の世界」朝日新聞社
「日本の樹木」山と渓谷社
「植物学名大辞典」万谷幸男編、植物学名大辞典刊行会