ムシカリ(オオカメノキ)‘ピンクパラソル’

ムシカリ(Viburnum furcatum)はオオカメノキとも呼ばれ、早春にブナ林で白い花を咲かせるガマズミの仲間です。
関東地方では標高1,200m以上の深山で見ることができます。
普通はブナの葉が展開する前に咲くので、この時期、山で咲いている姿はとても目立って綺麗です!
和名は、よく虫に食害されるので「虫食われ」と呼ばれたことに因むそうですが、実際はそんなにひどくないようです。
学名の種小名:furcatumは、「又状の、フォーク状の」という意味で、枝の出方の特徴から付けられたのでしょう。
ムシカリ(オオカメノキ)ムシカリ(オオカメノキ)‘ピンクパラソル’(Pink Parasol)は、このムシカリの桃色の花を咲かせる品種で、岐阜県瑞浪市在住の山口清重氏によって紹介されました。
元々この桃色の花を咲かせる個体は、山口氏と同じ瑞浪市大湫町に住む大竹郁三氏が、山取りしたムシカリ二本を庭に植えていて、そのうちの一本が桃色の花を咲かせたものなのです。しかも装飾花が多く、とても綺麗だったそうです。
その個体を山口氏が譲り受け(購入)、繁殖して世に広めたのが始まりです。
そして、英国王立園芸協会のRoy Lancaster(ロイ・ランカスター)氏が山口氏の圃場を訪ねた際に、この苗をイギリスに持ち帰り、自国で咲いた花を見て、素晴らしい品種だということで‘Pink Parasol(ピンクパラソル)’と命名したのです。(写真提供:山口清重氏)

ムシカリ‘ピンクパラソル’‘ピンクパラソル’の繁殖は接ぎ木によりますが、ムシカリは元々標高の高いところに自生しているので、平地の都市部などに植えると暑がります(暑さに弱い)。
そこで、山口氏は低地に自生するガマズミを台木にして、耐暑性を高めた苗づくりを行っているそうです。
しかも、そのガマズミの台木は実生苗ではなく、挿し木繁殖した苗を使用するそうで、その理由は、“実生苗に接ぐと台芽がたくさん出て暴れるが、挿し苗だと台芽をほとんど出さずにおとなしく育ってくれる”からだそうです。
耐暑性を考慮してガマズミを台木にし、さらに台芽を出させないために挿し苗を使用しているのです!
私は、台木は実生苗の方が絶対に良いと思い込んでいたので、この話を伺った時は目から鱗が落ちる思いでした!
心ある生産者はここまで考えて苗木づくりをしているのです!!(見習わなくては!)

ムシカリ‘ピンクパラソル’の花はとても素晴らしいです!
是非、ガマズミの挿し苗に接いだ‘ピンクパラソル’を入手して、ムシカリの桃色の花を身近に楽しんでみて下さい!

追:栃木県産の挿し木繁殖したガマズミの苗がたくさんあるので、来春、穂木を入手して接ぎ木繁殖に取り組みます!

※関連ブログ:
「第一回 花木よろずサミット」(こちら

参考文献:
「樹木大図説」上原敬二著、有明書房
「週間 朝日百科 植物の世界」朝日新聞社
「日本の樹木」山と渓谷社
「植物学名大辞典」万谷幸男編、植物学名大辞典刊行会