対馬産ヒトツバタゴ
茨城県内の知り合いの植木生産者さんから“対馬産ヒトツバタゴが満開!”(Chionanthus retusus)との連絡を受けて、花の撮影に行ってきました。
樹冠いっぱいが花で覆われていて、見事でした!
・2019/05/10撮影
属名の「Chionanthus」はギリシャ語で「雪の花」を意味し、樹上の白い花のかたまりを雪に見立てていますが、まさにその表現通りの咲きっぷりです!
この個体は、20年ほど前に埼玉県内の植木販売会社から1mほどの苗を購入して、圃場内に植えて育ったもの、とのことです。
ヒトツバタゴは、大陸系のモクセイ科の植物で中国中南部、朝鮮半島、台湾に分布し、日本では、岐阜県東南部とそこに接する長野・愛知両県の一部、対馬の北端のみに分布し、それぞれが天然記念物に指定されています。(対馬産のヒトツバタゴは昭和3年に国の天然記念物として指定)
なので、どうやって対馬産ヒトツバタゴが増殖され流通したのかは分かりませんが、以前は販売されていたようです。
対馬産と岐阜産は学名が同じで区別されていませんが、今回案内いただいた生産者によると、次のような違いがあるとのことです。
・対馬産の方が花付きが早く、だいたい接ぎ木して3年目には開花する。
・対馬産の方が花弁の幅が広い。
・対馬産の方が芳香が強い。
・対馬産の方が幹の芯が立ちやすく、素直な樹形になりやすい。
・対馬産の方が樹形にコンパクトに収まる。
うっすらとこのような情報は伺っていたので、是非とも生産してみたいと思って、今年2月に穂木を分けていただいて100本ほど接いだところです。
結果は、100%近い活着率でした!
2.3年後には販売を開始できると思いますので、ご期待下さい!
・今年接いだ苗(115本接いで113本活着)
なお、ヒトツバタゴは雌雄異株ですが、雌花のみをつける株は存在せず、雄花をつける株と、両性花をつける株があって、正確には雄株・両性花異株です。
今回撮影した対馬産ヒトツバタゴは実を付けるので両性花株のようですが、実が熟す前の緑色のうちに全部落ちてしまうそうなので、ヒトツバタゴは他家受粉性なのかもしれません。
その他、若い苗の時から開花し「一才性ヒトツバタゴ」という名で販売されているものは、植木情報に詳しい生産者へのヒアリングによると「済州島産のヒトツバタゴ」(こちらも同じ学名)とのことでした。
・20年経っても高さ5~6mに収まるのは造園材料としても有望!
引用、参考文献:「週間 朝日百科 植物の世界」、「植物学名大辞典」万谷幸男編
追記:「樹木大図説」(上原敬二著)に、“中国産のものは花弁の巾が日本産のものよりひろい”との記述があるので、対馬産ヒトツバタゴは中国大陸産ヒトツバタゴの要素を強く持っているのかもしれません。