毎年春が近づいてくるとサクラの開花情報で、テレビや新聞が賑わいます。
サクラの開花を待ちわびる人達が年々増えているような感じがして、植木生産者としては嬉しい限りです。
しかし、そんな中、ソメイヨシノが植栽されてから60年近く経つものも増えてきて、各地で老木となって、危険であるということから伐採されるケースも出てきています。
そして今春、国立市でニュースになったように、伐採に反対する市民と維持管理を担当する行政との間で対立があったりして、スムーズに更新できないところもあるようです。
サクラの花も終わって3か月が経過し、今では更新で対立するニュースも聞こえてきませんが、このまま何の手立ても講じないでいると、また来年同じ問題が発生してしまいます。
そこで、市民に愛される安全なサクラ並木を目指して、市民の合意を得ながら更新していく方法について、植木生産者の立場から提案したいと思います。
ソメイヨシノ簡単に言うと、更新対象木から後継樹をつくり、育て、植えるところまでを、市民の参加を得て行うのです。
具体的には…

1.サクラ並木の更新を市民参加で行いたいと呼び掛ける。

  • 安全で市民に愛されるサクラ並木を維持するために、計画的に更新していくことを行政が宣言する。
  • そして、その作業を市民の参加を得て進めていきたいと呼び掛ける。
  • 危険になったサクラを対症療法的に伐採・更新するのではなく、市民と向き合って計画的に進めていくのです。

2.更新対象となっている個体から後継樹をつくる。

  • 更新の対象となっている個体から穂木を採取して、接ぎ木繁殖によって後継樹をつくる。
  • 接ぎ木による後継樹づくりをやってみたい人を市民から募り、地元の樹木医や植木生産者などの指導を得て、講習会形式で後継樹をつくるのがお勧めです。(市民参加が得られない場合は委託する)
  • ソメイヨシノは接ぎ木繁殖されたクローンで、遺伝子的には全て共通ですが、市民からすると、これまで愛でてきた目の前のソメイヨシノに愛着があって、その命を絶やしたくないのです。

3.育ててくれる「里親」を市民から募集する。

  • 接ぎ木繁殖した小さな苗を、ポットで育てることができる数年間(2,3年程度)預かってくれる「サクラの里親」を市民から募集して、育てていただく。(近くの学校なども可)
  • その後は地元の植木屋さんに引き継いで、畑に地植えして街路に植えられる大きさに育てる。

4.植え付け時に「里親」に立ち会っていただく。

  • 街路に植栽する際には、「サクラの里親」にも立ち会っていただいて、記念植樹的な形で植え付け作業を行う。

以上の繁殖・育成・植え付けの一連の作業を通して、「サクラの里親」のプレート等を用意して、誰が繁殖し育てたか、分かるようにしておくことが望ましいです。
取り付けるプレート等は、可能であれば、伐採したサクラの材から製作できると良いと思います。
そのプレート作りも市民や学校、施設などに呼び掛けるとよいかもしれません。
ソメイヨシノ伐採が反対されているということでそのまま放置して事故が起こってからでは遅いですし、また今まで愛でてきて大切に思っているサクラを危険だからといって問答無用に伐採されてしまうのも簡単には受け入れられないと思います。
大切なのは、伐採対象となっているサクラの命を絶やすことなく、引き継いだ形で更新していくことだと思います。
同じソメイヨシノだからといって、別の個体を持ってきて植え替えるだけでは駄目なのです。
このことを認識してサクラ並木の更新に当たることが重要だと思うのです。
秩父のサクラ※関連ブログ:「ソメイヨシノの寿命について」(こちら