クマシデの果穂

今年花を見逃してしまったのですが、圃場内にあるクマシデ(Carpinus japonica)が、すでに果穂をぶら下げています。(果穂:小さな果実が穂状に多数集まったもの)
クマシデの果穂 クマシデの果穂10月までゆっくり時間をかけて熟すので、それまでの間、このホップのような形をした果穂を楽しむことができます。
この果穂が好きで、クマシデをお庭に植えたいと言う方がたくさんいらっしゃいます。
特に山歩きをされる方が、山でこの果穂を見て気に入って、身近に愛でたいとリクエストされるようです。
また、長めの葉としっかりとした葉脈が好き、という方も多いです。
秋の黄葉もなかなか見事です。

「樹木大図説」(上原敬二著)では、“日本では庭樹としては一般に用いられない。イヌシデの方が葉が小さく雅趣に富むのでこの方を用う。”と書かれてあって、庭木としての魅力は低いように評価されていますが…。

これまであまり植栽に利用されてきていないようですが、お気に入りの雑木の一つで、今後は使われて欲しいと思って実生繁殖しています。
クマシデの果穂・発芽3年生の苗も今年結実しました!

因みに、クマシデは「カバノキ科クマシデ属」に含まれていて、日本にはクマシデ属は、クマシデ、イヌシデ、アカシデ、イワシデ、サワシバの5種が生えています。
これらクマシデ属の植物は、人手の入った雑木林に普通に見られ、コナラと混生することが多いです。
そして、種子の散布型がコナラは動物散布型(動物に運んでもらう)で、クマシデ属は風散布型という違いがあって、その違いから生える場所は少し異なるようです。
具体的には
・コナラ : 台風などの被害の少ない北西向きの斜面(安定していて動物の利用が多い)
・クマシデ属 : 湿潤かつ動物が好まない立地

雑木林でコナラやクマシデを見掛けた時、生えている環境を観察して、種子散布型の違いを手がかりに、樹林の成り立ちを読み取ってみるのも面白いと思います!
クマシデの果穂※参考・引用文献:「樹木大図説」(上原敬二著 有明書房)、「週間 朝日百科 植物の世界」(朝日新聞社)、「日本の樹木」(山と渓谷社)

※関連ブログ:「クマシデの土用芽

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