チカラシバとアオチカラシバ
お彼岸も過ぎて10月に入り、すっかり秋の陽気となりました。
この頃になると、ススキの穂が目立ち始めて、秋の季節感を演出してくれます。
普段ほとんど目立つことのないイネ科やカヤツリグサ科の植物達の多くは、秋になると花穂を立ち上げて存在感を示すようになります。
そのイネ科植物の一つにチカラシバ(Pennisetum alopecuroides)があります。
花穂を立ち上げてくるまでほとんど見分けがつきませんが、黒紫色のボトルブラシのような特徴的な花穂を見るとそれと分かります。
ススキ同様、秋の季節感の演出に一役買っている日本の重要なイネ科植物の一つだと思います。
名前の由来は、「力芝」の意味で、強靱で根の張りが強く、力を入れても容易に抜けないことから付いたようです。
日本では北海道から南西諸島まで分布し、さらに東アジア、東南アジアまで広く分布している植物です。
路傍、草原、堤防、荒れ地などに群生しますが、踏みつけに特別強いというわけではなく、オヒシバやカゼクサなどのより踏みつけに強い植物の後ろ側に生えることが多いようです。
また、ススキなどの丈の高い植物と競争すると、すぐにやられてしまうようで、適度な踏みつけや刈り取りなど、人の関わりがあって初めて存続できる「人間依存の植物」のようです。
このチカラシバに花穂が緑白色になるものがあって、アオチカラシバ(f. viridescens)と呼んで区別しています。
このアオチカラシバの花穂を逆光で眺めると、きらきらと白く光ってとても綺麗です!(白穂のチカラシバ!)
雨滴などが穂に付いていたら最高です!
お庭を彩る秋の魅力的な植物になること間違いなしです!
写真の個体はヤマシタナーセリー山下信夫氏が静岡県駿東郡小山町で見い出したものです。
種子と株を分けていただいて、来年から繁殖をスタートさせます!
※参考、引用文献:
「牧野 新日本植物図鑑」牧野富太郎著、北隆館
「日本 野生植物館」奥田重俊編著、小学館
「フィールド百花 野の花1」大場達之、平野隆久著、山と渓谷社
「週間 朝日百科 植物の世界」朝日新聞社